蔡依林(Jolin Tsai)とは?
- 出身:台湾
- ジャンル:POP/バラード/Dance
- デビュー:1999年
- 特徴:キュート&クールなダンスチューンから定番POPsまで幅広く、独自のカラー・世界観を出せる楽曲
蔡依林(Jolin Tsai)は(漢字読み:cai yi lin)、
台湾では間違いなく歌姫の1人に数えられる大御所の台湾シンガーですが、
若いデビューの頃から今もバリバリの現役でかつ、ずっと大きな変化・進化を見せている、
歌の業界で、(わき目を振らずに:他に逸れずに)時代の波に乗りつづけている面白いアーティストです。
その変わり方は、一番若いころの特徴が出ていた大人気楽曲と今の楽曲を比べれば一目瞭然なので早速オススメから入りたいです。
今は本当に、独自の世界観や見せ方をしており、台湾版ケイティペリーを彷彿させるスター性に欠かない存在です。
蔡依林 Jolin Tsai – 說愛你(2003年)
まずは今も、おそらく彼女の楽曲で一番人気であろうこの告白ソング「說愛你=Say I love you」です。
告白を可愛いメロディと歌詞、そして彼女のキュートな声に乗せて歌うこの楽曲は男女問わず魅了し、
日本の大塚愛さんを思わせます。
90年代~2000年代に日本でも流行った、定番ポップスなメロディやPVな感じですが、
この頃から既にダンスを強く意識していたのが良く分かります。
蔡依林 Jolin Tsai《說愛你》(feat.G.E.M.鄧紫棋) (2020年)
そしてこの曲を20年経った後の近年のLiveでパフォーマンスした時、
※ゲストにG.E.M.鄧紫棋を迎えてのステージ
当時と変わらぬ可愛さを残したまま、圧巻のパフォーマンスでした。
2006年後事務所を移籍してからは(以前から既にですが)、
ダンス系の色がさらに強くなったか、実績としても、パーフォーマーとしての数々の受賞などを経て、
【トップアイドル・ポップシンガー】からダンスなどの【パフォーミングーシンガー】としての
キャリアアップをし、飛躍しています。
(もちろんこの長い歴の中で、大陸の中国含む、中華圏全体で圧倒的知名度を勝ち取り、今もその名声を誇っております)
さらに彼女は大学でも英語選考ということもあり、
英語に長けており、Englishをよく楽曲に取り入れているのも武器で、
しかもさらに、その「パフォーマー」という意味はダンスからだけでなく「世界観作り」も大きな要素として
独自のカラーを出しております。特にニュートラルジェンダーを感じさせる以下の楽曲もそうですが、
こういった特徴から、ケイティ・ペリー(Katy Perry)やレディー・ガガ(Lady Gaga)を個人的に想起させます・・・!
蔡依林 Jolin Tsai《玫瑰少年 Womxnly》(2019年)
こちらは五月天(Mayday)のボーカル阿信との共同作詞でもあります。
実際この曲では、
曲調のせいもあってかJustin Bieberの「Sorry」を想起させられましたね(笑)
ただやはり、言えるのは台湾歌手の中でも、洋楽チックな要素を多く取り入れられているのも
彼女の1つの近年の進化の要素かと。
実際この楽曲はアメリカの振付師や監督に入って頂いて出来上がった楽曲です。
ダンスにはさらにCLこと李彩麟(イ・チェリン)という韓国人のラッパーダンサーにも入って頂くなど、
多国籍のダンサーもPV中で見られるのも要注目!
THE FIRST TAKEバージョンも(蔡依林 Jolin Tsai/玫瑰少年 Womxnly)
そして、何より、先に性(ジェンダー)に対して中性系(ニュートラル)・・と申しましたが、この楽曲は
「Womxnly」というタイトルにありますが、(漢字は「薔薇の少年」という意味)
実際は「ありのままの女性を」という意味が強い感じがします。 (心or体は男性でも・・など)
楽曲紹介でもダンスと紐づけて、「自分を愛して、体が感じるありのままで」というニュアンス表現を意識されているようです。
ただ、First takeのこのVだけ、又は事前情報なしのPVを見ても、
我々日本人はまだ、この楽曲の意図を理解できないのが惜しいところです。
ここまで力を入れているのは、
この楽曲は実は「葉永鋕」さんという実際のLGBTQ関連の問題でお亡くなりになった方の話に基づいて
作られました。※こちらは後でご紹介
蔡依林の良い意味での裏の顔として、こういうジェンダー問題に食い込む作品を輩出しているのも彼女の魅力です。
ご存じの通り、台湾はアジアで一番ジェンダー問題において最先端を行く国です。
2019年、台湾はLGBTに悩む人々を全肯定する形で、アジアの国で1歩抜き出ることになりました。
このきっかけの1つになったと言われる事件に基づいて、実はリリースした楽曲が先の曲であります。
さらに同じような(史実に基づいた)楽曲を輩出しており、特に以下はジェンダー問題において
後進国の我ら日本人からすると、ある意味衝撃的かもしれません。
蔡依林 Jolin Tsai – 不一樣又怎樣 We’re All Different, Yet The Same(2014年)
これは是非PVの最後の展開を見て欲しいです(日本語字幕がないので残念ですが)、
(以下ネタバレになってしまいます)
同性の女性である為、女性婚が認められない現状の中、
愛し合う張淑月さん邱秀滿さんの身に起きる物語(おそらく仮名)
瀕死で病院に緊急で運び込まれた相方、手術にあたり医者から同意書への(親族の)サインが必要告げられますが、
婚姻関係が成り立たないので(深い関係だと説明しても)、親族と病院からも認めてもらえず、
何度お願いしても「規定だ」と断られ、どうしようかと慌てふためく・・・
なんとか姪っ子を呼びつけ、サインをできたが
時すでに遅しか、結局相方は既にお亡くなりに・・・
その後伏せる病床で、若かりし頃の自分たちの夢を見る。
最後は看護師さんに「すみません、貴方のこの方とのご関係は・・・?」と問われ・・・
「私は〇〇(PVご覧ください)・・・です」
と、泣けます・・・。
LGBTQ+やSexual Minority(セクシャルマイノリティ)問題に関して
その他にも、先に挙げた(玫瑰少年 Womxnly/薔薇の少年の)
2000年「葉永鋕」さんの事件があります。
台湾国内で大きな問題となり、世論を動かし、2019年の法案可決に結びついた発端でもあります。
台湾南部で中学生(15歳)だった葉永鋕さんは、授業中の学校のトイレである日突然亡くなりました。
幼少から料理や家事が好きで、とてもはつらつとして優しい性格であった「葉永鋕」さん。
各方面の医者からは「息子さんは正常」と言われる中で、
行動が女性っぽいという周りの同年代の目が次第にいじめにエスカレート、
特にトイレでズボンを脱がせて性別を確認されるなどの事があり、
母への助けを求める手紙を出しておりました。
学校側に母がクレームを言えど、子供に過保護な反応をする母と見られ、
子供である葉さんも次第にSOSを出せなくなり、
トイレに行く時間も授業中や人けのない時間などに急いで済ませる状態だったとのこと。
自宅でもトイレで気を失うなど、過度のストレス環境にあったようです。
今回、頭部には骨の損傷や膜下出血などひどい状況で、後に肺炎やら心疾患が見られた為、
病院側も、気管支炎や心臓からくる発作的な眩暈などで
トイレで倒れ頭を打ち付け死亡、又は水浸しのトイレで滑り頭を打ち死亡のような回答を出しました。
さらに、なんと学校側は警察が到着するまでに、彼が身体が元々悪い事もあるので、
(たまにある気絶だろうと)現場の血痕などを清掃して他の生徒が使えるようにしてしまっており、
これが捜査による真相解明への道を遠のかせる一因になったようです。
一度学校側の関係者3名は(それが隠蔽や悪意であったという証拠がないと)無罪とされ、
以上の病院からの結果で事件が閉じられるところだったのを、
母親含むLGBT協会、または審理する法廷の関係者が奮起し長い激突の末、再審を勝ち取り、
学校側の責任を追及することができました。
そこからは前述の通り、世論での関心・議論が盛んになり、
記録映像として彼のドキュメンタリーもでき、台湾国内に大きな形を残しました。
2000年の死後、2003年に行政院が「人権保障基本法」の中に同性結婚を認める草案を作成したが
最初は野党により否決などが続き、実はようやく2019年に通った形です。
これらはこれから生まれてくる子供たちを含む、
誰にも起こりうることだという警鐘を以て、歌詞も阿信らと練り上げられています。
日本国内の学校でもこういう問題はレベルの違いはあれど、そこら中で起こっておりますが、
未だ政府の対応レベルは、消極的としかいえない状態で、さらに言うと、
見えないふりをしている(物事が大きく問題が起きるまで蓋をされている)ようにも
感じられます。
楽曲を通して、こういったことを考えさせてくれるシンガーは
本当に尊敬できる存在ですね。
丁度2019年という台湾が法案可決をし、
LGBTQ+の問題に悩む人々が一番うれしい時に、また世間が注目するタイミングに
この丁度20年前の問題をRemindさせる蔡依林の取り組みはまさに大きな波及効果ですね。
最後に、ある意味日本では一番話題になったともいえる、
安室奈美恵さんとのコラボ楽曲です。
蔡依林 Jolin Tsai – I’m Not Yours Feat. 安室奈美惠(2015年)
今回一風変わりますが、
昔の女帝-女性社会の世界観をPVで存分に体現しておりますね。
英語が多く分かりやすいと思いますが、「あなたのものではない」「私たちは自分たちでやり遂げられる」というような
強いメッセージは多くの女性の「女性軽視に対する奮起」を促す「女性のパワーは偉大である」と女性応援歌としての楽曲とも捉えられます。
安室さんの貴重な中文を聞けるのも日本人としては魅力!
改めて振り返ると、こういうジェンダーに関して踏み込んだ歌は、特徴的で、
これらの曲は日本では現状なかなか生まれ得るものではないので、
大切にしたいものですね!
五月天(Mayday)Versionは以下!